こんにちは、kinacondaです。
新規事業や社内変革など、企業の方向性に大きくインパクトする仕事って、非常にエキサイティングに見えますよね。
でも渦中にいる方々にとっては、具体的に何をポイントに進めていくべきか、頭を悩ませることが多いのではないでしょうか?
そんな方に、ぜひ紹介したい一冊があります。
トレタ社社長の中村氏が書かれた『外食逆襲論』という本です。
僕自身、新事業構想を考えている状況でこの一冊と出会い、強烈なインプットとなりました。
一見関連しないように見えるこの一冊が、なぜ構想や企画に有益と考えたのか、今回はその理由を熱く語っていきたいと思います。
全ての産業に関わる方が読むべき
読み終えて、正に見出しの通りに感じたことが、今回レビューしようと思った最大の理由です。
というのも、この時代に無くてはならない「テクノロジー」とどう向き合っていくかが多く語られているからです。
僕自身、外食とは完全に畑違いのIT業界に籍を置いていますが、特にその部分で強く共感しました。
では具体的にどう参考になると感じたのか、特に印象的だったポイントを抽出して以下に整理していきます。
①テクノロジーの本質
テクノロジー、というと何かが楽になる、便利になるということをイメージするかと思います。
著者は、それら合理化や効率化は最初に起きる現象でしかなく、その後のサービスの高度化こそが目的であると説いています。
それはつまり、無駄な業務を排除することによって、より接客の質向上に専念でき、本来顧客が求める「ぬくもり」を提供できるということですね。
このことは、外食産業のみならず、テクノロジーを用いる全ての産業が再認識すべきことだと思います。
なぜなら、産業を問わず、あらゆるものがデジタル化されていく時代だからです。
自身の職場、あるいは支援企業が何等か新たな技術を取り入れることが、より日常的になっていくことでしょう。
その時気を付けるべきことは、新技術の導入がゴールになってしまうことです。
僕もコンサル時代に、そのような光景をよく目の当たりにしました。
大事なのは、それを使って結果どうしたいのか、もっと言うと、顧客に何を与えたいのか、を明確にすることです。
それが抜け落ちると、本末転倒になってしまいます。
導入後のグランドデザインを軸に、必要な機能とそうでない機能を見極める事こそがITリテラシーである、と著者が強調していた部分に強く共感しましたね。
テクノロジーの導入を検討する企業側、またそういった企業を支援するコンサル側の両方にとって、忘れてはいけない視点が語られていることが、まずもってオススメする理由です。
②一点突破
これまで、「人」、「モノ(商品)」、「場所」の三つの要素全てて差別化を図ることが基本とされてきました。
しかしながら、著者は今後一点突破こそが必要になると説いています。
なぜなら、競合の多さと情報の早さで、簡単に埋もれてしまうからですね。
特に今では、それこそテクノロジーの発達によって、競合が必ずしも同じ地域や同業種に留まらない、ということを理解しておく必要があるでしょう。
自動車業界の競合がGoogleになったり、金融機関の競合がLINEになる、そうした時代に今僕たちは生きています。
だからこそ、著者も主張している通り、他が真似できない自分達だけが提供できる「体験」は何かを、熟考する必要があるんですね。
僕個人としては、今後商品で尖るのはなかなか難しいかなと感じています。
というのも、やはり情報の早さと技術の進歩によって、簡単に競合に模倣、駆逐されるからです。
実際、僕の勤務先でもこれを経験しているので、なおさら強くそう思いますね。
商品の質を求めると、ラットレースに巻き込まれ続けるリスクが高く、優れた開発者やまたその人員数を確保できていない企業は、あっという間に市場の隅に追いやられていきます。
そういった背景を踏まえ、著者も「人」や「場所」でどれかで尖ることの方が戦いやすいだろうと語っています。
こちらも、企画に携わる方、そしてそれを支援する方の両方にとって、今まで以上に強く意識すべき点となるでしょう。
③常連客を増やすことが最重要
これからは、商品から「関係」の時代になると説いています。
それはつまり、「売れる商品」を作れる企業やお店ではなく、顧客と長期的な関係を築ける企業やお店が生き残るということです。
「そんなの昔から言われてるでしょ?」と思われるかもしれませんが、実際それが実践できていない企業が多いのが実情です。
実際、僕が支援している企業でも、新規獲得に向けた広告費に抵抗がない一方で、既存顧客に報いる施策に向けての投資判断は渋るケースが非常に多いです。
それに対して、本書では、実際常連客を確保することの方が、売上向上に対して断然効率的であることを、数値根拠を持って示しています。
その点で充分に説得力に値するのですが、なにより僕達が忘れてならないのは、殊日本国内において人口が減り続けているという点です。
それだけでも、新規より定着に向けて既存客に注力する方が、より合理的と言えるでしょう。
幸いなことに、今ではテクノロジーで常連予備軍を可視化できる時代です。
著者も語っているように、過去に取得できなかったデータを通じて、どういうユーザー/顧客に注力していくかの判断が容易になりました。
よって、テクノロジーへの依存度もそれだけ高まってきています。
ただ忘れていけないのは、そういったテクノロジーやデータが、今まで以上にお客様を理解するための手段でしかない、という点です。
現職でもクライアントによく話すことですが、それらは、サービスの人気度や満足度を測る材料でしかありません。
最も大事なことは、「そもそも顧客に何を提供したいのか」「何を実現したいのか」というコンセプトです。
それがブレてしまうと、点の新規客は増えても、本来求める常連客を生み出すことはできません。
これが本書で何度と念押しされている、「テクノロジーに引っ張られ過ぎない」、ということですね。
「尽くすべきは新規より既存顧客」、これが今後の産業界に共通した命題であることを、この本が再認識させてくれます。
企画や戦略を考える人にこそ有益
以上、こちらの書籍があらゆる産業に属する方に有益であることを話してきました。
その中でも、新規事業や商品開発に関わる経営企画やマーケティング担当の方、またそれを支援するコンサルの方は必見だと思います。
自分のように、何等かプランニング段階にあって、壁にぶつかっている方にこそ、光を与えてくれる一冊となるでしょう。
少しでも多くの方にそうなることを祈って締めたいと思います。
ではまた。